おくすり遺伝子検査(NAT2)は、東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター前所長の鎌谷直之先生の監修により、国内外の最新の研究により構築された質の高い科学的根拠に支えられています。
解析部位について
・NAT2(N-アセチルトランスフェラーゼ 2)遺伝子C282T多型(rs1041983)
・NAT2(N-アセチルトランスフェラーゼ 2)遺伝子T341C多型(rs1801280)
・NAT2(N-アセチルトランスフェラーゼ 2)遺伝子C481T多型(rs1799929)
・NAT2(N-アセチルトランスフェラーゼ 2)遺伝子G590A多型(rs1799930)
・NAT2(N-アセチルトランスフェラーゼ 2)遺伝子G857A多型(rs1799931)
主として、以下のPeer Review Journalに掲載された論文のうち日本人を対象として行われた研究を中心に検索し、それらのデータを採用した。その中には、東京女子医科大学の研究グループや神戸大学医学部など複数の研究グループによって得られた結果に基づいています。
スルファサラジン(別名サラゾスルファピリジン(SASP)ともいう)は、低分子抗リウマチ薬の中でもメトトレキサートに次いで二番目に良く使われている薬です。抗リウマチ薬としては比較的速効性(約1~2ヶ月)である一方、副作用が比較的多く、重症な副作用として肝・腎障害、消化器系障害、心膜炎や胸膜炎、重い血液障害 などがあり、それらの重症副作用のために投薬を中止せざるを得ない場合も発生します。
スルファサラジンは吸収された後、肝臓にあるN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)という酵素によってアセチル化されますが、アセチル化が速い人(RA;Rapid Acetylator)とアセチル化が遅い人(SA;Slow Acetylator)とが存在し、アセチル化が遅い人において、しばしば上記の副作用が発生しやすいことがわかっています1)~5)
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)という酵素の遺伝子タイプを検査することで、アセチル化が速いタイプか、アセチル化が遅いタイプかを判定し、この薬の副作用のリスクを予測することが可能となります。すなわち、NAT2遺伝子上に存在する①C282T多型(rs1041983)、②T341C多型(rs1801280)、③C481T多型(rs1799929)、④G590A多型(rs1799930)および⑤G857A多型(rs1799931)の5箇所のSNP*1をタイピング後、複数のSNPのつながりを解析するアルゴリズムを使いハプロタイプ*2を決定し、次いでディプロタイプ*3を判定するものです。NAT2遺伝子の変異のないハプロタイプ(NAT2*4;N型(Normal type)とする)と、変異のあるハプロタイプ(NAT2*4以外のハプロタイプ;M型(Mutant type)とする)において、N/N型ディプロタイプあるいはN/M型ディプロタイプはRapid Acetylator(RA)、M/M型ディプロタイプはSlow Acetylator(SA)と考えられます。
*1 SNP: SNPとはSingle Nucleotide Polymorphismの略で、一塩基多型とも呼ばれます。遺伝子はグアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)と呼ばれる4種類のDNAの並び方が、タンパク質の設計図となっていますが、そのうち人によって並び方が異なる部位のことをSNPと呼びます。(例:ACGCTA→ACGATA)
*2 ハプロタイプ: 遺伝子をどちらの親から受け継いだ遺伝子かで分けたときに、一方の親の由来の遺伝子の並び方をハプロタイプと呼びます。通常の遺伝子検査では、どの遺伝子情報とどの遺伝子情報が同じ親由来のものであるかを知ることは困難であるため、統計的手法と専用のアルゴリズムを用いて推定することが必要となります。
*3 ディプロタイプ: ハプロタイプの組み合わせをディプロタイプと呼びます。
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●おくすり遺伝子検査(NAT2) 同意書
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●おくすり遺伝子検査(NAT2) 結果見本
1) Tanaka E, et al. Adverse effects of sulfasalazine in patients with rheumatoid arthritis are associated with diplotype configuration at the N-acetyltransferase 2 gene. J Rheumatol. 2002 Dec;29(12):2492-2499.
2) Ohtani T, et al. Slow acetylator genotypes as a possible risk factor for infectious mononucleosis-like syndrome induced by salazosulfapyridine. Br J Dermatol. 2003
3) Teshima D, et al. Sulphasalazine-induced leucopenia in a patient with renal dysfunction. J Clin Pharm Ther. 2003 Jun;28(3):239-242.
4) Kumagai S, et al. N-acetyltransferase 2 genotype-related efficacy of sulfasalazine in patients with rheumatoid arthritis. Pharm Res. 2004 Feb;21(2):324-329.
5) Taniguchi A, et al. Validation of the associations between single nucleotide polymorphisms or haplotypes and responses to disease-modifying antirheumatic drugs in patients with rheumatoid arthritis: a proposal for prospective pharmacogenomic study in clinical practice. Pharmacogenet Genomics. 2007 Jun;17(6):383-390.