「おくすり遺伝子検査®」とは

どんなおくすりでも効きやすい人(レスポンダー)と効きにくい人(ノンレスポンダー)が存在します(図1)。また、おくすりを飲んだときに、副作用が出る場合がありますが、この副作用が出やすい人と出にくい人が存在します。

このように一人一人が、おくすりを飲んだときに、得られる効果と副作用の出やすさに差が出てくることがありますが,そのことを「薬物応答性」といいます。

この薬物応答性の違いをつくりだしている大きな要因の一つに遺伝的素因があります。

その遺伝的素因を調べる検査が『おくすり遺伝子検査』です。

図1 おくすりの効きやすい人(レスポンダー)と効きにくい人(ノンレスポンダー)
図1 おくすりの効きやすい人(レスポンダー)と効きにくい人(ノンレスポンダー)

「おくすり遺伝子検査®」で何がわかるのでしょうか?

●そのお薬を飲んだときの効果や副作用の発現予測情報が得られます!

たとえば、おくすりの代謝にかかわるとても大切な役割をはたしているものにCYP2C19という酵素があります。この酵素は、人によって大きく分けて、①高活性型(Rapid Metabolizer;RM)、②中活性型(Intermediate Metabolizer;IM)、そして③低活性型(Poor Metabolizer;PM)の3つのタイプが存在します。たとえば、図2のように、日本人が100人に集まったとき、RMの人は34人、IMの人が50人、PMの人が16人存在します。「おくすり遺伝子検査-CYP2C19遺伝子検査-」を受けることによって、自分が①~③のどのタイプであるのかがわかります。

胃潰瘍や逆流性食道炎、ピロリ菌除菌の補助に使われるおくすりにオメプラゾールやランソプラゾールというものがあります。これらのおくすりはCYP2C19により代謝され、活性を失います。よって、PMの人は、RMやIMの人に比べ、効果が持続しやすくピロリ菌除菌の場合には、高い除菌率、逆流性食道炎の場合には高い治療効果が得られる傾向があります。

一方、神経症における不安、緊張、抑うつのおくすりにジアゼパムとうものがあります。ジアゼパムはCYP2C19により代謝され、活性を失います。CYP2C19がPMの方はジアゼパムの血液中に残りやすく、常用量でも、過剰摂取したときと同じような副作用が起こる可能性があります。

図2 おくすりの代謝に関わるCYP2C19のタイプ
図2 おくすりの代謝に関わるCYP2C19のタイプ

【白い人34人:高活性型(RM)、ピンク色の人50人:中活性型(IM)、赤色の人16人:低活性型(PM)】

「おくすり遺伝子検査®」はどんなメリットがあるのでしょうか?

●検査結果に基づき、おくすりの副作用を避け、より効果的におくすりを使うことが可能になります

今までは、遺伝体質を考慮しないでおくすりの代謝が早い人も遅い人も同じ量だけおくすりを飲んでいました。図3のようにおくすりの代謝が遅い人は、おくすりが体内に残りやすく、それによって副作用が出やすかったります。一方、おくすりの代謝が速い人は、おくすりがすぐに体内から消えてしまい、それによって効果が得られにくかったりします。そのことが事前にわかっていれば、おくすりの代謝が遅い人には、おくすりの飲む量を減らしたり、飲む間隔の伸ばすことで、副作用を回避できる場合があります。一方、おくすりの代謝が速い人は、飲む量を増やしたり、代謝されにくい別のおくすりに替えるという選択肢が得れらます。

図3 通常のおくすりの処方(a)と遺伝的素因を考慮したおくすりの処方(b)の概念
>図3 通常のおくすりの処方(a)と遺伝的素因を考慮したおくすりの処方(b)の概念

【白い人:高活性型(RM)、ピンク色の人:中活性型(IM)、赤色の人:低活性型(PM)】

「おくすり遺伝子検査®」では何を調べるのでしょうか?

簡潔に述べますと、個人ごとに少しずつ異なる遺伝子上の違いを調べます。この少しずつ違いを遺伝子多型と呼びます。代表的な遺伝子多型としては、一塩基多型(SNP;Single Nucleotide Polymorphism)やマイクロサテライト多型がよく知られております。図4のように、一塩基多型は、1つの塩基が別のものに変わっている個人差で、マイクロサテライト多型は、数個の単位の配列が数回から数十回繰り返す(繰り返し配列)の繰り返し回数の個人差です。

図4 遺伝子多型の種類
>図4 遺伝子多型の種類